この度、10月1日「千年美容 玄」をスタートさせる運びとなりました。

 ここまで辿りつくまでに本当に様々なことがありました。師の「肌は心の一番外側だと思う」という言葉の通り、肌を通して皆様が心身共に健やかになって頂くお手伝いをさせて頂きたいという思いからここに玄をスタートさせる覚悟を決めました。

 「千年美容 玄」をスタートさせるにあたり、わたくし事ではありますが、亡き父にふれさせて下さい。

 実は、この度令和2年9月16日に父が76歳で息を引き取りました。6月に肺癌ステージ4と診断されました。進行の早いタイプの癌で、手術をすることも出来ず、抗がん剤の治療が始まりました。父の治療の経過は主人が詳しく記してくれました。(やすたまさゆきフェイスブック

 昭和の広島の男という表現がそのままの父で、口数も多くなく亭主関白、育った環境ゆえにその経験から何でもできる・作れる父で、父の農業を手伝うようになってからは、かなわないなと感じることばかりでした。空をみて「雨が降る」というと必ず降り、風を読み、釣りなどの道具も自ら作るそんな父でした。

 厳しく、気丈な父でしたが、病気が発覚してからは娘の私には時折弱気な姿を見せるようになりました。私には兄がおりますが、埼玉県在住なので、父の治療のことや父の請け負っている農業のことなどは私が母と相談して全てを決めなければならない状況でした。9月2日に主治医の先生から、転移したリンパ節が食道を圧迫しているため呑み込みが難しく食べられない状況なので、体力回復の見込みも厳しく、今の体力では治療を継続することは難しいと伝えられた時、すでに主人とも話しをしていたので在宅医療に切り替え、家で最期を看取りますと、迷いなく伝えました。

 その日から、10日間続くことになる、家での看護が始まりました。最期まで痰に苦しめられ、吸引の指導を病院で受けた私と母で、少しでも父が楽になればと慣れない吸引の作業を頑張りました。昼夜を問わず、とにかく痰をとってもらいたい父の為に、30分から長くても2時間おきの吸引で、私が泊まれた日は私が、それ以外の日は母が夜間の吸引をし、昼間は母を休ませるため毎日看護を交代しました。家に帰れた安堵からか退院して3日間くらいはほんの僅かではありますが、柔らかく炊いたカボチャや、果物などを口から食べており、同じ空間で食事をすることができました。家の外には出れませんでしたが、車いすに乗せ、縁側から父の作った庭を見せてやることも出来ました。これまでは父が剪定をし、きれいに保たれている庭木が、今は枝葉が伸び切っている姿を見た父は母に剪定の仕方など伝えておりました。自ら作った池で元気に泳ぐ錦鯉を見た父の表情が緩みとても穏やかなになったあの顔は、忘れられない父の顔の一つです。退院する時に先生から「日ごとだと思ってください」と言われた言葉そのままに、日ごとに食べれなくり、弱っていく父を目の当たりにする日々でした。

 最期を迎える前日、退院してからほぼ眠っていなかった父が薬の力なのか眠り始めた時、そっと帰ろうかとも思ったのですが、何か後ろ髪をひかれ、寝始めた父の肩に手を置き「お父さん、帰るからね。明日もまた来るよ。」と声をかけると、パッと目を開き、しっかりとした目で私をみつめ、もう片方の手をそっと握りしめてくれました。翌日、息を引き取る時には私は20分くらい間に合わず立ち会えませんでしたが、息を引き取った父の体に抱きついた時、まだ温かくて起きてくるのではないかと感じるほどでした。父の温かさを感じることができ、昨日の別れが父が選んだ私との最期だったと思え、不思議と後悔はありませんでした。

 コロナ禍の中ということもあり面会も厳しく制限され、電話をしようにも転移したリンパ節が声帯を圧迫しているため声も出にくく、自分の意思をちゃんと伝えられない父を一人では逝かせたくないと思い、父が産湯に浸かったこの家に連れて帰ることが出来たこと、父の二人の妹や大切な友達に会わすことが出来たこと、そして最後まで父に寄り添え看取れたこの時間は、私の宝物です。

 このような状況で「千年美容 玄」をスタートさせることを悩みました。実は通夜の日に、何度も何度も訂正を繰り返しなかなか申請が通らなかった「化粧品製造」が認可されると連絡が入ったのです。病気が発覚してからのこの三か月間は、父が私に自分の城を持ち一国一城の主になる覚悟や様々な大切ことを教えてくれるための最後の時間だったように感じます。そのような父が、父を送り出す時に「よし!」と私の背中を押してくれたと感じ、この機をスタートにしたいと思いました。

 しかしながら、まだ忌中ですので四十九日法要で納骨が済むまでは祝い事は避けたいと思いますので、グランドオープンは11月4日とさせて頂きます。勝手を申しますが、皆様のご理解ご了承のほど、宜しくお願い申し上げます。

 ここまで紆余曲折がありながらも、私の思いに寄り添いずっとサポートして下さったロバ企画室様に感謝申し上げます。そして、私ひとりでは到底乗り越えられなかった父との最期の時間をいつも傍で支えてくれた主人、娘たちにこの場を借りて感謝を伝えさせて下さい。

 末永く「千年美容 玄」をよろしくお願い致します。

千年美容 玄 代表 安田佳子