千年美容 玄のビジョン

 平安の世に丹波康頼によって編纂された日本最古の医学書『医心方』(原本は1984年に国宝に指定される。東京国立博物館所蔵)。その医心方をひも解き、日本古来の発酵・熟成文化と融合させ独自の美容料を完成させたのが漢萌の創業者であり、私の師である三戸唯裕(1925-2015)です。

「自然とは何だと思う?」これが、師の初めての問いでした。

その後、この問いは幾度となくといかけられました。
「今の時代は何に関しても人間の浅はかな知恵で何とでもできると思い込んで、自然本来の力を失っている。」と師は言いました。つまり、現代の化粧品の多くは効率性・費用対効果・エビデンスなどに追いかけられ、有効成分とよばれる物質を化学的な過程を経て取り出し、それらを組み合わせたものが多い。そうして出来上がった化粧品たちは即効性や有効性・時短・簡単などという肩書を持たせられる、ということだと思います。

 一方、漢萌が昭和30年代から作り続けてきた美容料たちは、選び抜かれた薬草は、根は根、葉は葉そのままに、ゆっくりゆっくり煎じられ、何度も丁寧に濾され、そのうえ長い年月をかけて寝かしてようやく皆様のお手元に届けられます。漢萌の美容料には草根木皮に「火」と「水」と「時」という自然の功に職人たちの「技」が加えられています。

 お手入れ方法も、「肌もあんたよ。あんたがあんたを大事にせんで、誰が大事にしてくれるん?そう思ったら、肌を力任せに扱えんじゃろ?肌を優しく撫でながら肌が欲しがる分だけ与えてあげんさい。そうしたら、肌がもう足りとるよと教えてくれるけー。」と時間に追われ、パパっと済ませてしまいがちなお手入れも、せめてお肌をお手入れする時だけでも、ゆっくりと丁寧にお肌と向き合っているうちに自分の心が落ち着かされていくような、そんなお手入れの心を教わったように思います。

 野菜でさえ人工的な環境で作られるようになった我々が生きる社会。AIの進化と普及により想像をはるかに超えるスピードで社会環境は変化し、このままでは“自然の恵み”や“時の功”といった力はもちろん、その言葉さえも忘れ去られてしまう世の中になってしまいそうで怖ささえ感じます。

 玄という文字は「黒」を表します。ただ、それに止まらず「天地万象の根元となるもの」「深遠な道理」と意味もあります。この「玄」の字が持つ意味が何かにつけて「自然(じねん)さんありがとう」とこぼれる様に語っていた師の在り方に重なりました。1000年前の先人たちの知恵が詰まった「医心方」から生まれた漢萌の美容料と美容法、そして三戸唯裕の教えをあわせて一つとし、また今後1000年続いていくようにと願いを込めて『千年美容 玄』と名づけました。

「肌は心の一番外側ではないかと思うんよ。」という師の言葉。皆様の健やかなお肌と穏やかな日々のために一つ一つを丁寧に紡いでいくことをお約束いたします。